人は誰しも気持ちが高ぶったり、落ち込んだりすることがあります。双極性障害を抱えた方は、その気持ちの高ぶり(躁状態)や落ち込み(うつ状態)が大きく出ることがあります。
双極性障害を抱えたままでは働くのは難しいのではと思う方もいるかもしれませんが、そうとは限りません。
実際、双極性障害を含む精神障害のある方の就職件数は年々増加傾向にあります。気持ちの波と上手く付き合っていければ、就職も可能です。
この記事では、双極性障害の方が活躍しやすい仕事や働き方について解説します。
双極性障害の方は、極端に活発的になる「躁状態」と気持ちが落ち込んで無気力になる「うつ状態」という全く異なる状態が繰り返される傾向にあります。
躁状態のときは一見元気そうに見えることや躁鬱の切り替わりが不定期であることから、双極性障害を抱える本人でも状態の把握が難しく、職業生活に支障を来すことも少なくありません。
まずは「躁状態」「うつ状態」のときに起こり得る困りごとを解説します。
双極性障害の方は、躁状態になると気分が高揚することから、日常の様々な行動に症状が現れてきます。よくある行動に、普段より早く目覚める、夜更かしする、一方的に話続ける、過信して勝手に仕事を進める、怒りっぽくなる、といったものがあります。このような行動が現れることから、よくある困りごととしては、
が挙げられます。
また、躁状態が激しく長く続いてしまうと、その後のうつ状態も激しく長くなる可能性があります。「いつもより元気だから」「仕事が普段より進むから」といったような理由で、躁状態を放置していると、体調が悪化するリスクが出てくることも覚えておきましょう。
双極性障害の方は、うつ態になると気分が落ち込み、無気力になってしまいます。
このような症状が出やすいため、仕事では下記のような困りごとが生じやすくなります。
うつ状態のときはうつ病の方と似た症状が出やすくなります。しかし、躁状態からの反動で余計に強い症状が出やすくなるため、双極性障害の方には双極性障害に合った治療や対処が必要です。
双極性障害と上手く付き合いながら、安定して勤務を続けている方は多くいらっしゃいます。そういった方々も、周囲の方からサポートを受けて働いているため、自己完結で問題を解決する必要はありません。
ここからは、双極性障害の方が気分の波と上手く付き合いながら仕事を続けていくために、本人ができることについて解説します。
双極性障害の当事者であっても症状の把握や予測は困難です。しかし、毎日記録をつけていれば、傾向を掴みやすくなるでしょう。
躁状態・うつ状態を見極めるポイントは、睡眠時間の差です。起床時間・睡眠時間を毎日記録し続けると、睡眠時間に差があることがわかります。いつもより睡眠時間の短い日が続いている期間は、躁状態になっている可能性が高いため、対策が必要です。仕事を早めに切り上げる、意識的に休憩時間をとるなどして、強いうつ状態にならないように備えましょう。
快適に仕事を続けるために、睡眠時間とともに仕事量についても記録しましょう。どのくらいの仕事量をどの程度時間をかけて行っているのかを毎日記録すると、日々の仕事量の増減を可視化できます。この記録を活用すれば仕事量を調整可能です。無理なく働けるようになり、仕事が長続きします。
双極性障害の方が仕事を安定して続けていくためには、信頼できる方からのサポートが必須です。適切にサポートしてもらうためには、自分の今の状態を理解してもらう必要があります。
医師に対しては、通院の際に日々感じていることを正直に伝えましょう。そうすることで、医師は正確に症状を理解できるため、適切なお薬を処方してもらえます。もしお薬では解決できない問題がある場合は、対応方法なども相談してみてください。
ご家族には、双極性障害について理解してもらうことからはじめましょう。そして、こまめにコミュニケーションをとるように意識してください。会話の内容はとりとめのないことで構いません。日常的にコミュニケーションをとると、ご家族はいつもと違う状態に気づきやすくなります。
双極性障害の方は、仕事のパフォーマンスがその時々の状態に左右されやすい傾向にあります。周囲からの理解を得るために、定期的に仕事の進捗や体調を上司に共有しておきましょう。
この方法は、ご自身の障害について職場で開示する必要があるため、躊躇する方もいるかもしれません。
しかし、仕事の進捗をこまめに共有できるようになると、仕事に支障が出ていてもやる気の問題ではなく障害によるものだと理解してもらえます。社内に症状を把握してくれる方がいると、快適に働けます。
安定して仕事を続けられる方もいますが、障害にまつわる問題を一人で抱え込んでしまい、仕事を続けていくことが困難に感じる方もいます。
今の職場に長く定着するために工夫することも重要です。しかし、無理に続けるより離職を検討したほうがいい場合もあります。
うつ状態がひどくなると、憂うつな状態が続いたり、朝起きられなくなったりするため、会社に行けなくなってしまいます。
1日2日程度の欠勤であれば復帰の可能性も見込めるでしょう。しかし、1週間以上欠勤が続くのであれば、復帰は容易ではありません。職場での働き方を改善しても欠勤が続いてしまう場合は、離職を検討することをお勧めします。
双極性障害の方は、その時々の状態によって仕事量に差が出やすいため、誤解を受けることも少なくありません。
躁状態だと気持ちが高ぶって多くの仕事をこなせるため、周囲から高い評価を受けます。しかし、うつ状態のときは気力が落ちていて仕事を上手くこなせないため、周囲からはサボっていると誤解されてしまうでしょう。
職場で障害に対する理解を得られないと、誤解から人間関係に亀裂が入り、スムーズにコミュニケーションがとれません。コミュニケーションがとれないことは大きなストレスとなり、体調悪化につながる可能性があります。
障害について理解のない職場で仕事を続けることは、容易ではありません。
長時間にわたって緊張状態や興奮状態が続くような仕事や職場は、双極性障害の方にはお勧めできません。躁状態を長い間維持したまま働くと、後にうつ状態になったときに反動で症状が悪化する可能性があります。
躁状態でいたほうが仕事も捗るから向いているのではと誤認しがちですが、うつ状態の悪化というリスクを抱えたまま仕事を続けるのは、ご自身のメリットにはなりません。
躁状態とうつ状態、どちらの状態でも働きやすい職場を検討しましょう。
今の職場環境ではとても仕事を続けられない、気力が湧かなくてほとんど出勤できていないという方は、今の仕事を続ける以外の選択肢も検討してみましょう。
体調を崩したときは、無理をせずに体を休めることも大切です。強いうつ症状が出てしまった場合は、休暇をとることも考えましょう。休み明けに周囲からどう思われるのか、自分のポジションがなくなるのではという不安も当然あるかと思いますが、無理に働いて体を壊してしまっては元も子もありません。
体調の回復が見込めず、すぐに働くことが難しい場合は、障害者支援施設を利用しましょう。
就労継続支援事業所は、一般就労が難しい方が利用できる福祉サービスです。この事業所には障害について理解のある職員が在籍しており、適切なサポートを受けながら通所できます。職業訓練や作業に取り組み、一般就労を目指します。
現在、障害について周知せずに働いているのであれば、障害者枠での転職を検討してみましょう。
企業は、障害者枠で就職した社員に対して合理的配慮を提供する義務があります。合理的配慮とは、障害のある方が何らかのサポートを要求している場合、企業は負担にならない程度で応じる必要があるという法的な決まりです。合理的配慮を受けながらであれば、仕事での困りごとも少なくなるでしょう。
また、障害があることを周囲に開示すると、職場定着率は高くなります。厚生労働省が令和2年2月に公表したデータによると、障害者枠で就職した方の1年後における職場定着率は70.4%でした。一般枠かつ障害について開示しなかった場合の定着率は30.8%となりました。障害のある方が長く働くためには、職場全体で障害への理解を深めることが不可欠です。
既に障害者枠で働いている方も、今の職場に不満を抱えているのであれば、障害者枠での転職を検討してみましょう。
参考:障害者雇用の促進について 関係資料
今働いている双極性障害の方は、事務やエンジニア、プランナー、人事、経理など、多様な職種に就いています。マネジメントポジションで活躍している方も少なくありません。
快適に働けている方は、ご自身の障害特性を把握して周囲に必要なサポートを正確に伝えています。職場の方はどのような対応が必要なのかわかっているため、何かトラブルがあっても大きな混乱は生じません。障害のある方は誤解されることが少なくなるため、ストレスを感じることなく働けます。
また、障害について周知していれば、障害のある方が気づけなかった体調の変化を、職場の方が気づいて対応してくれる可能性もあります。
障害者枠での転職を成功させるためには、ご自身の障害特性について理解する必要があります。しかし、一人で理解を深めることは難しいでしょう。
誰かにサポートしてもらいながら転職活動を進めたい方は、障害者向けの転職エージェントを利用してください。
障害者向けの転職エージェントでは、障害についての知識が豊富なスタッフが求職者の障害特性を理解した上で、その方に適した企業を紹介してくれます。
障害者枠での転職を検討している方は、転職エージェントに相談しましょう。
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