急性ストレス障害になったらお仕事はどうする?治療法や復職のタイミングをご紹介 | ココピアキャリア

急性ストレス障害になったらお仕事はどうする?治療法や復職のタイミングをご紹介

災害や事故などで生命の危機にさらされたり、暴力被害を受けたりといったことで起こる心的外傷体験は、さまざまな精神疾患の原因となります。そのうちの1つである急性ストレス障害は、心に傷を負った体験によるストレスに対して強い防衛反応を引き起こす病気です。

発症すると日常生活や仕事に支障が出てしまい、休職せざるを得ないケースもあります。また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)まで進行してしまうことも少なくありません。

この記事では、急性ストレス障害の症状や原因、治療法などとともに、復職のタイミングや復職前におすすめのリワークプログラムについてご紹介します。


急性ストレス障害とはどんな病気か

まず、急性ストレス障害とは具体的にどのような病気なのか、症状やその原因を掘り下げていきましょう。

急性ストレス障害の症状

急性ストレス障害で生じる症状は、主に原因となった辛い出来事を思い出したり再び体験したりするように感じる「フラッシュバック」や、夢に何度も表れてしまう、辛い体験を思い出してしまいそうな物事やシチュエーションを避ける症状といった内容が挙げられます。

また、自分が自己から切り離されて、遠くから自分を俯瞰して見下ろしていると感じる症状も起こります。これを「解離症状」と呼び、あまりのショックで記憶が断片化してしまうといった事例も含まれます。

さらに、何の前触れもなく突然いらだったり、大きな音に対して過剰に驚いたり、現実感を失って放心状態になったりという症状がみられるケースもあります。

急性ストレス障害の原因

急性ストレス障害は、冒頭でも少し触れたように「心的外傷体験」によって引き起こされます。心的外傷体験は「トラウマ」とも呼ばれ、以下のような心の傷となりうる辛い体験のことを指します。

  • 災害や事故などによって自分の生命に危険が及ぶ
  • 暴行被害によって著しく尊厳を傷付けられる
  • 凄惨な事故を目撃する
  • 近親者や友人などが災害や事故などで命を落とす
  • 大きなケガを負う

急性ストレス障害は、これらの体験を経験してから数日から数週間にかけて症状が現れることが多くありますが、フラッシュバックなどをきっかけに何年も経ってから発症するケースも珍しくありません。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)との違い

急性ストレス障害とPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、症状や原因がよく似ています。この2つの病気には関連性があり、急性ストレス障害による症状が1週間以上続いているとPTSDに診断名が変わります。つまり、急性ストレス障害は、PTSDの前駆症状とも言えるのです。

急性ストレス障害は、1ヶ月以内に症状が回復することが多くあります。

PTSDまで症状が進行する前に回復させるためには、家族や友人といった周囲の方が協力して心の傷を癒し、精神科・心療内科の医師や心理士、支援者などに相談することが望ましいでしょう。


急性ストレス障害の治療

では、急性ストレス障害の治療法にはどのようなものがあるでしょうか。PTSDまで進行させないためにも、早めのケアが大切です。以下で代表的な治療法を3つご紹介します。

精神療法と暴露療法

急性ストレス障害の場合は、精神療法と暴露療法がとても有効な治療法とされています。

主な精神療法は、「認知行動療法」と呼ばれるものです。これは、認知と呼ばれる物事の考え方や、現在問題となっている行動などを医師や心理士と一緒に見つめ直して、陥りやすい思考や感情のパターンに気付き、ストレスをコントロールする治療法です。

もともとはうつの患者に対して開発された精神療法でしたが、今ではうつだけでなく不安障害や脅迫障害などさまざまな精神疾患に対して効果があるとされています。

具体的なプロセスとしては、最初は病気に対する認知を改善することから開始し、どのような場面で強い不安を感じるのかを少しずつ理解していきます。

そして、生活リズムを整えたり成功体験を増やしたりすることで、不安に感じる要因と時間をかけて向き合うというアプローチをとります。

一方で、暴露療法は強い不安やストレスを感じる場所に意図的に行くことで心身を慣れさせる治療法を指します。余計に悪化してしまうのではと思われるかもしれませんが、ストレスの原因を回避し続けることでかえって症状が悪化したり、慢性化したりするケースも少なくありません。人間はどうしてもストレスになると感じたことは避けてしまう習性があるため、段階的に少しずつストレスの原因と触れることで「慣れ」と「安心感」を覚え、不安を減らしていくというプロセスです。

ただし、専門の医師が診察をし、この方法が合っているのかを慎重に判断した上で行わなければなりません。

家族や友人などにつらいことを話す

自分が受けた悲しみや辛い気持ちを話し理解して傾聴してもらうことは、急性ストレス障害において重要な治療法です。話をする相手は、家族や友人、恋人やパートナーなどのほか、心理士やカウンセラー、心的外傷体験を受けた人を支援するグループの方などが挙げられます。

家族や友人は、患者が話したいと思うことだけを話してもらい、話したくないことに関しては無理に聞き出さない姿勢で、とにかく聞くことに徹するのがポイントです。

処方薬を服用する(薬物療法)

二次症状として入眠困難などの睡眠障害が強く出ている場合や、不安な気持ちが強く出ている場合には、症状に応じて薬が処方されることもあるでしょう。しかし、世界保健機関(WHO)においては、急性ストレス障害に薬物療法は望ましくないとされています。

そのため、基本的には先ほどの心的外傷を思い出す物事から離れて、周囲と話をしたり、カウンセリングを受けたりする治療が優先されます。


急性ストレス障害とお仕事

急性ストレス障害は、症状が重い場合やPTSDまで進行してしまった場合、休職を余儀なくされる恐れがあります。その場合は、どのように復職を目指していけばいいでしょうか。考えられる方法を以下でご紹介します。

復職する際のタイミング

急性ストレス障害やPTSDの症状などによって休職した場合、復職するタイミングについて悩まれる方も多いでしょう。復職するタイミングとして望ましいのは、自分が仕事に戻れるという意欲があり、なおかつ医師からも復職して良いという判断が下されている場合です。

十分に回復していると医師が判断すれば、医師が診断書を書いて患者の社会復帰を認めます。

また、企業によっては、リハビリとしての試験的な出勤制度を設けているところもあるため、利用してみるのもおすすめです。

なお、仕事復帰した後も、少なくとも月に1度は職場の人事部などに現在の状態をリアルタイムに報告すると両者にとっても安心です。

焦らず回復を待つことも大切

休職中の場合、どうしても「早く職場に復帰したい」という気持ちを持たれる方が多いかもしれません。しかし、焦ってしまうことでさらにストレスが積み重なって症状が悪化したり、再発したりしては元も子もありません。

症状の悪化や再発によって休職期間がさらに延びてしまい、ますます焦ってしまうという悪循環につながる恐れもあるため、休職期間中は「今はきちんと休むべき時なんだ」という意識を忘れずに、睡眠や食事などの生活リズムを整えることに専念しましょう。

また、飲酒や喫煙など、生活リズムの悪化にかかわるような習慣には気を付けなければいけません。

復職前におすすめ! リワークプログラム

休職期間中に心身を休めて働ける兆しが見えてきたら、「リワークプログラム」を受けることをおすすめします。リワークプログラムとは、精神疾患が原因で休職を余儀なくされた方に向けて行われる、職場復帰に向けてのリハビリテーションです。

リワークという名前は「Return to Work」の略称から名付けられました。

リワークプログラムを利用できるのは、地域の障害者職業センターや医療機関などです。決まった時間に毎週通所することで、職場への通勤を想定した訓練になります。

「復職はしたいが自信がない」という方や、「復職を考えているが医師の許可が下りていない」という方におすすめのプログラムです。


急性ストレス障害の方に向いている仕事とは

急性ストレス障害やPTSDを抱えている方の就職・転職は、病気の状態に合わせた仕事選びが大切です。ここからは急性ストレス障害の方に向いている仕事や、仕事選びの際に利用できる2つのサービスについてご紹介します。

急性ストレス障害の方に向いている仕事

急性ストレス障害の方は症状の特性上不眠や不安、イライラなどを感じやすく、日によって出社が困難になることも少なくありません。また、職場の環境や通勤中などに心的外傷体験を思い出してしまうこともあります。

このようなことが理由で職場に出社して勤務することが難しいと感じる場合は、在宅ワークを検討してみても良いでしょう。在宅ワークであれば、自宅などストレスの負荷がかかりにくい環境で仕事を進められます。在宅ワークとして代表的な仕事は、テープ起こしやデータ入力、Webライティングなどが挙げられるでしょう。

在宅ワークの仕事は、主にクラウドソーシングサイトから見つけられます。未経験でも始めやすいのが特徴で、ITスキルがある方であれば、コーディングなどのWeb制作をはじめとした職種に採用される可能性もより高まります。

大切なのは条件に合った職場を探すこと

急性ストレス障害になった場合、症状がある程度落ち着いたとしても何かのきっかけで再発することも少なくありません。そのため転職する際は、業務内容だけでなく職場の雰囲気も重視する必要があります。

しかし、求人票などの文字の情報だけで職場の雰囲気を予測することは難しいでしょう。職場の雰囲気を把握したいなら、ハローワークにある専門援助窓口(障害者窓口)の利用がおすすめです。この窓口には精神障害などの専門知識を持っている職員や相談員が配置されているため、自身の障害・病気の状態について相談しながら仕事を探せます。

仕事探しが大変な場合は転職エージェントを利用しよう

急性ストレス障害やPTSDなどで転職を考えている方は、「転職エージェント」を利用することも効果的です。転職エージェントとは、転職希望者と中途採用を希望する企業とをマッチングさせてくれる企業のことを言います。求職者のスキルや要望に合わせて企業を紹介してくれるだけでなく、求職者自身からは聞きにくい給与面についても相談に乗ってくれるため、安心しながら仕事を探せます。

また、転職エージェントのなかには、障害者雇用に特化した企業もあります。急性ストレス障害が長引いてPTSDになってしまい、一般企業への就職が困難と感じており、障害者雇用での採用を希望している方は心強いサービスと言えます。障害者手帳を保有している方であれば、障害者雇用での採用を視野に入れてみても良いかもしれません。


まとめ

急性ストレス障害は、適切な支援や治療を受ければ完治が見込める病気ですが、うまく治療が進まない場合はPTSDに進行する可能性があります。フラッシュバックや解離症状は日常生活においても支障をきたすこともあり、休職に至ることも少なくありません。

休職に至った場合は、この記事でご紹介したように生活リズムや生活習慣に気を付けながら、無理をせずに焦らず、少しずつ復職に向けて進んでいくことが大切です。