発達障害の方はITエンジニア(SE)の仕事に向いているのか? | ココピアキャリア

発達障害の方はITエンジニア(SE)の仕事に向いているのか?

発達障害の方は一般的に、仕事の得意・不得意が大きく出やすいといった特徴があります。ITエンジニアの仕事はプログラミングの正確さやスピードだけでなく、問題解決力、コミュニケーションスキルなど、職種に応じて様々な能力が求められる場合があります。

この記事では、発達障害の方の特性に応じた、ITエンジニアとしての働き方をそれぞれの特徴から見ていきます。


発達障害の種類

発達障害の方の特性は、個人によって様々ですが、大きくASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)に分類できます。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)

「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「限定した常同的な興味、行動および活動」が大きな特性としてあり、具体的には、社会生活の中では次のような困難を伴います。

  • 相手との適切な距離が分からない
  • 言葉の裏の意味や場の空気を読み取るのが苦手
  • 客観的な立場(相手の立場)で物事を考えられない
  • 決まったやり方にこだわり、臨機応変の対応ができない
  • 興味・関心が極端に偏っている

これらの特徴から、ASDの方は、マニュアルやルールの定まったルーティンワークに向いていると言われています。また、自分の興味のある領域においては、高い集中力をもって専門性を究めることができるため、研究者として成功を収める方もいます。一方で、場の空気や相手の気持ちを汲み取ることや、臨機応変に対応することが求められることは苦手と感じる方が多いです。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

「不注意」「多動性・衝動性」が大きな特性となっています。どちらか一方が優位に現れる場合や、両方が混在して現れる場合があります。それぞれ具体的には次のような症状が見られます。

不注意

  • 注意を保てず、仕事などに集中できない
  • 抜け漏れや忘れがあり、約束や仕事の期限を守れないことがある
  • ものをなくすことが多い

多動性・衝動性

  • 落ち着きがなく、そわそわとした動きが目立つ
  • 止められずにしゃべり続けてしまう
  • 考えるより先に行動してしまう

これらの特徴から、ADHDの方は、様々なものに興味を持ち、固定観念に囚われずアイデアを出せること、考えるよりもまず実行に移す行動力がある人が多いです。一方で、同じ作業の繰り返しや一度に複数のことに注意を向ける必要のある仕事、正確さの求められる仕事は苦手と感じる方が多いです。

LD(学習障害/限局性学習症)

知的発達全体の遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち特定のものについて、学習に遅れが見られます。具体的には以下の困難が生じます。

「読み」「書き」「計算」の困難

  • 文章の読み書きが遅かったり、不正確だったりする
  • 読んでいる場所が分からなくなり、文字や行を読み飛ばすことがある
  • 似た形の文字を読み分け・書き分けが苦手
  • 読んでも意味を理解できていないことがある
  • 数の大小や関係性が分からないことがある
  • 数学的な概念が理解できず、時計を読めない

LD/SLDの場合は得意・不得意に個人差が大きいため、職業の向き・不向きを一概に言うことが難しいです。ただし、異なった考え方や表現ができること、細かい情報よりも全体像を読み取ることが得意である方がいるようです。


ITエンジニアの種類

ITエンジニアの種類は、実に多様なものになっています。IT技術が進歩している現代では新しい職種も次々に生まれています。ここではITエンジニアの代表的な職種を見ていきましょう。

システムエンジニア(SE)

システムエンジニア(SE)とは、コンピュータシステムを開発する際に提案、設計、開発、テストまでの一連の流れを担当するITエンジニアのことを呼びます。システムエンジニア(SE)の主な仕事内容として、クライアントからのヒアリング、その後のシステム設計が挙げられます。所属している企業や開発チームによってシステムエンジニア(SE)の仕事の幅は異なり、実際にプログラミングを書く場合、テストを行う場合もあります。

プログラマー

プログラマーは、システムエンジニア(SE)が制作した仕様書をもとに、システムがきちんと作動するようにプログラミングを行うITエンジニアのことを指します。仕様書通りにプログラミングを書いてもうまくシステムが作動しないこともあり、その際は仕様書の不備を見つけることも仕事の一部となります。対応する言語によって、アプリケーションプログラマーやWebプログラマーといった呼び方をされることもあります。

社内SE

社内SEは、主に自社のITシステムの構築や運用、保守に携わる仕事や、ITヘルプデスクとして自社の社員に対して、パソコンや社内ITシステムの使用方法の問い合わせや故障対応などを行う職種を指します。社内SEは、基本的に自社内のシステムに関わる業務のみを行う点がシステムエンジニアとは異なる点です。自社の業績向上やコスト削減に向けて、より良いITシステムを導入するべく、会社全体のIT戦略を担うこともあります。自社内だけで開発する場合や、開発を外注する場合などもあります。近年のIT化の流れに伴い、IT以外の業種の企業において、社内SEの採用に力を入れる企業が増えてきました。

その他(インフラエンジニア、WEBエンジニア、など)

その他にもITエンジニアにはいくつかの種類があります。インフラエンジニアと呼ばれる、サーバー構築やネットワーク管理、クライアント端末の設定などのITインフラを担当もの。
WEBエンジニアと呼ばれ、WebサイトやWebアプリケーションなどの設計や開発、運用や保守を担当するエンジニアなどがあります。

求人によって、システムエンジニアや社内SEといったように職務内容を明確にして求人を出している企業があれば、オープンポジションとして求人が出されており、その人の能力や希望に応じた職種が企業から提案される場合もあり、ITエンジニアの求人の種類も様々になっています。

発達障害の方にITエンジニアは向いている?

発達障害の特性によってはITエンジニアに向いているものもあると言えるでしょう。ASDの特徴の一つである「興味がある分野で高い集中力を発揮する」、ADHDの特徴の一つである「固定概念にとらわれない、行動に移すのが早い」はITエンジニアの職に活きる可能性が充分にあります。プログラミングに興味があれば、周囲の人よりも高い集中力を持って業務に取り組むことができ、より高い生産性につながるかもしれません。クライアントからのヒアリングをもとに、画期的な提案が行え、スピードが大事なIT業界において、設計や開発を即座に進めることができるかもしれません。

障害特性によっては向き不向きがある

発達障害の特性によっては不向きなものもあります。クライアントからのヒアリングが主な職務となった場合、特性として対人関係が苦手な方には不向きかもしれません。不注意の傾向が強い方であれば、プログラミングで言語を書く作業でケアレスミスを多発する可能性もあるでしょう。全ての発達障害の方にITエンジニアの職が向いてるとは言えませんが、その人の障害特性によっては十分に活躍できるでしょう。

安定的な勤務には、障害特性に応じた職場環境が大切になる

仕事内容が障害特性に適したものであったとしても、職場内で障害への理解がなければ仕事が苦痛に感じる人もいます。障害特性と仕事内容が一見するとあっていない職に就いている人であったとしても、障害に理解のある人たちと働いていれば、安定的に長く働いているケースもあります。発達障害の方にとっては仕事内容だけでなく、障害特性に対して周囲から適切なサポートが受けられるかも大切になってきます。

障害者枠における、ITエンジニアの雇用状況

障害者雇用枠と聞くと、軽作業や事務職の求人を思い浮かべる人がいるかもしれません。ですが、実はITエンジニアの求人も数多く存在します。ココピアキャリアから転職が決まった人の中でもITエンジニアの方の割合は多くなっています。その背景をここでは見てみましょう。

ITエンジニアの求人が増加傾向

近年のIT化の流れに伴い、IT関連の事業を新しく立ち上げる企業や、社内のIT関連の部署に一層注力する企業が増えています。そのため、以前まではIT関連の事業を行っていなかった企業であっても、IT人材の採用に力を入れる企業が増えてきました。以前より求人が多かったIT・通信系の企業も引き続きITエンジニアの採用を行っていますので、その求人数が多いことに変わりはありません。
具体的なデータで見てみると、転職サービス「Doda」が2020年6月に発表した転職求人倍率によると、IT・通信に関する技術職の求人倍率は、2014年7月段階で約5倍、すでに他の職種と比べて最も高い数値になっておりました。さらに、2019年7月では約10倍と、5年でおよそ2倍の増加がみられました。ITエンジニアの求人は年々増えていることが読み取れます。

障害者枠で就業する発達障害の方が増加傾向

2018年より精神障害者(発達障害含む)が障害者雇用枠の常用労働者数にカウントされるようになりました。それ以前は身体、知的障害者のみがカウントされる仕組みであったために、精神障害者(発達障害含む)の雇用がなかなか進まない過去がありました。そのため直近では精神障害者(発達障害含む)の就業者数の伸び率が、他の障害に比べてもっとも高くなっています。
ハローワークにおける障害者の職業紹介状況を見てみると、発達障害の方(高次脳機能障害などを含む)の就業件数は、平成19年には365件とわずかであったのに対し、平成28年には4580件と10倍以上に増加しています。(平成29年厚生労働省、障害者雇用の現状等より)

ITエンジニアの求人数は時代の流れに沿って増加しており、障害者雇用枠で働く発達障害の方の人数も近年増加傾向にあります。つまりITエンジニアで働きたい発達障害の方にとってはスキルを活かしながら、なおかつ障害に理解のある企業で働く機会が増えてきたと見ることができるでしょう。


発達障害の方でITエンジニア職での転職をお考えの方へ

精神障害者保健福祉手帳をお持ちで、ITエンジニアの経験がある方であれば、障害者雇用枠での転職を検討してみてはいかがでしょうか。障害者雇用枠で働く場合、障害を開示した状態で入社するため、職場から障害に対してサポートを受けやすいことがあり、その後の定着率も高くなる傾向にあります。

一般枠で転職する際に気を付けたいこと

発達障害の方であっても、良い求人が見つかれば、一般枠のITエンジニアへの転職を考える方もいるでしょう。長年一般枠で働いていたとしても、転職の際は注意が必要です。環境が変わり障害へ理解ある人がいなくなると、ストレスを感じやすく、同じ仕事量であったとしても急に体調を崩す可能性があるからです。職場にどういったメンバーが在籍しているのか、入社後の仕事の流れはどうなっているのか、入社前にできる限り詳しく把握するようにした方がいいかもしれません。

障害者枠での転職をお考えであれば、障害者雇用専門の転職エージェントへの相談がおすすめ

発達障害の方が障害者雇用枠のITエンジニア職へ転職を希望される場合は、障害者雇用専門の転職エージェントへの登録がおすすめです。障害者雇用専門の転職エージェントは、障害に理解ある企業の求人を保有しているだけでなく、専門性の高いITエンジニアの求人を持っていることがあるからです。ハローワークや求人広告ではなかなか目につかないものもあるでしょう。内定時の条件交渉や、入社後の定着支援など多岐にわたるサポートを受けることもできますので、一度相談してみてはいかがでしょうか?