うつ病の患者数は、1999年に44万人だったのに対して、2008年には104万人と、約10年で倍以上に増加しており、現在ではうつ病は特別な病気ではなくなってきました。
ITエンジニアの職場でも、過酷な環境下で体調を崩し、うつ病を発症する方が数多くいらっしゃいます。一度うつ病を発症するとITエンジニアとして仕事を続けることが難しくなる方もいらっしゃいます。
一方で、うつ病にうまく対処しながら、ITエンジニアの仕事を続ける方も多くいらっしゃいます。
この記事では、うつ病を抱えたITエンジニアの方に向けて、障害者雇用枠での就職について紹介します。
近年ではうつ病がメディアで取り上げられることも増え、一般的な認知度も上がってきました。一方で、企業の現場では、未だに正しい理解が得られてはいないという現状もあります。目に見えない病気であるが故に、「仕事をさぼっている」「やる気が感じられない」という理由で叱責されてしまう人もいます。まずは症状に対する正しい理解から始めましょう。
うつ病の症状は人によって様々で、精神的なものと身体的なものに分かれます。
精神的な症状:気分の落ち込み、意欲の低下、喜びや楽しみを感じられない等
身体的な症状:体がだるく感じる、睡眠がとれない(とりすぎる)、表情が乏しくなる等
うつ病ではない人も、仕事でうまくいかないことがあれば、一時的に気分が落ち込むものです。しかし、うつ病の人は一般の人とは異なり、これらの症状が長期間続く場合、なんの前触れなく気分が落ち込む症状が発症する場合があります。
うつ病になった際、体を充分に休め、薬の服用を継続すれば、症状は改善に向かう傾向にあります。(寛解する可能性も約30%と言われています。)しかし、うつ病の症状が回復してきたからといって、無理に働いたり、薬の服用をやめてしまうと、うつ病の症状が再発したり、慢性化したりする場合があります。症状が回復したと思っても、再発の可能性があるのがうつ病の特徴です。一度うつ病を発症した方には継続的なケアが必要となるのです。
うつ病を発症する理由は様々ありますが、ITエンジニアとして勤務している方の中には、過酷な職場環境で働いているために、うつ病を発症しやすい状態になっていることが考えられます。仕事が勤務時間内に終わらず過度な残業が常態化している、厳しい納期により精神的なプレッシャーを日々感じる、これらの環境はITエンジニアの人の中には当たり前に感じる人もいるかもしれませんが、このような心身に過度な負担がかかっている環境で働いていると、うつ病を発症するきっかけとなることがあります。
うつ病を一度発症した方の中にも、その後同じ勤務先に職場復帰する方、転職して安定的に働いている方がいらっしゃいます。症状や程度に応じて必要な対策は変わってくるため、一例にはなりますが、安定的に働くためのコツを見てみましょう。
うつ病の発症・再発を防ぐため、心身を健康に保つことはとても大切です。その中でも、定期的な運動はうつ病に効果的なことが研究によって証明されています。座った状態でのPC業務がメインとなるITエンジニアは、運動不足になりやすいですので、ヨガやランニングなど体を動かす時間を確保するようにしましょう。また、睡眠時間が普段よりも長く(短く)なってきたら、体に過剰な負担がかかっている可能性があります。早めに仕事を切り上げるなどして、体に負荷を与えすぎないようにしましょう。
働きすぎにより体に過度な負担がかかると再発のリスクが高くなります。そのため、勤務先によって可能であれば、引き受ける仕事の量をコントロールし、過度な残業は避けるようにしましょう。
自分の症状を知っている人が職場内にいると、安心して働くことができます。定期的に体調の変化を共有することで、体調が優れないときは早退したり、仕事を他の人に割り振ってもらったりといったように、状況に適した臨機応変な対策をとることができます。
障害者雇用枠では2018年から精神障害者が法定雇用率の算定の対象に追加されました。そのため、企業側で精神障害者を採用するハードルが下がり、うつ病をはじめとする精神障害者が障害をオープンにして働くようになってきました。
障害者雇用枠とは、事業主が障害者の雇用を進めるために作られた枠組みです。日本の法律では「採用の自由」のもと、事業主が雇用する人は自由に選べるようになっています。しかし、障害者などが就職転職時に不利になる可能性があるため、一般の雇用の枠組みとは別に障害者雇用枠が設けられました。
障害者雇用枠で働く精神障害者は増加傾向にあります。H29年厚生労働省 障害者雇用の現状等によると、ハローワークにおける就職件数が
H18年:6,739件→H28年:41,367件
と増加しており、その増加率は身体障害者、知的障害者の中で、最も多くなっております。
障害者雇用枠で働く障害者と一般枠で働く障害者には入社後の定着率に大きな差があります。障害者雇用枠の1年後の定着率は約70%に対し、一般枠で障害を開示せずに働いた場合の定着率は約32%となっており、倍ほどの開きがあります。ここでは、うつ病の人がなぜ障害者雇用枠で働くと、安定して長期的に働くことができるのかを見てみましょう。
精神障害者の中には自分の障害を隠して働く人もいらっしゃいます。目に見えない障害のためできることではあるのですが、自身の体調を理解してくれる人が身近にいないと孤独感や居心地の悪さを感じ、安定的に働くことができなくなる人もいらっしゃいます。そのため障害を企業に伝え、安心感を持って働く人が増えています。
障害者雇用枠で働くと、企業から合理的配慮を受けることができます。例えば、引き受ける仕事量を抑え難易度を低くしたり、1日の残業時間を制限することで、体に無理なく長期的に働ける職場環境を整えたりして調整しています。
うつ病の人の中には、急に朝起きられなくなったり、倦怠感に襲われたりする人がいらっしゃいます。そんな時は欠勤や早退が必要になるわけですが、事情を知ってる人が身近にいると急なことでも理解してもらえやすく、本人も無理せずに体を休めることができるので、長期的な勤務が実現しやすくなります。
障害者雇用枠と聞くと軽作業や事務系の求人が思いつく人が多いかもしれませんが、実はITエンジニアの求人は事務職と匹敵するくらいに多数でています。それは近年のIT化の流れと、適切な環境があれば障害者がITエンジニアとして活躍することができると、企業側が気付き始めたことが大きな要因です。
障害者雇用枠であってもITエンジニアの仕事内容は多岐にわたります。、社内SE、研究開発、インフラエンジニア、SEなど、経歴に応じて様々な職種があります。経験だけではなく、障害特性にも応じた仕事先で働くことができるのが特徴です。
障害者雇用枠のITエンジニアの一般的な雇用条件の傾向をみていきましょう。
雇用形態:正社員と契約社員でいうと、契約社員の求人の方が多い傾向にはあります。ただし、契約社員といっても基本的に無期雇用が多いです。正社員の求人も全くないわけではありません。
待遇:能力や前職の実績によって幅広く変動します。20代でITエンジニア経験者であれば年収300万以上は一般的です。企業によっては、ITエンジニア経験が7.8年以上ある方であれば年収500万以上も目指せる職種です。明確な上限はありません。
勤務時間:9~18時が一般的です。最近では、時差出勤やフレックス制を導入している企業が増えています。
業界:業界には差がなく、IT企業、その他の一般企業共にITエンジニアを募集しています。障害者雇用自体は300名以上の大企業で行われていることが多いです。
受けられる配慮事項:体調や仕事に関する定期的な面談や、残業時間の制限が一般的な配慮事項に挙げられます。
障害者雇用枠で働く精神障害の方が増えているものの、その人のITスキルに応じたポジションが用意される職場はまだまだ少ないのが現状です。
障害者雇用専門の転職エージェントに相談すれば、あなたのITスキルとうつ病の障害特性に応じた求人の紹介を受けることが可能です。
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