発達障害のひとつに、読み書きや計算に困難が生じるLD(学習障害)があります。読み書きや計算がうまくできず業務に支障が出て困ってしまうのが、この障害の特徴です。それでは、LDの方にはどのような仕事が向いているのでしょうか。今回は、LDの方が仕事をする上での困りごとと、それを踏まえた上で向いている仕事について解説していきます。
LDは、文字の読み書きや話を聞いたり話したりすること、計算など学習全般の習得や実用が困難な発達障害のことを指します。聞き間違いが多く文字を読んでも意味を理解できなかったり、簡単な計算がとっさにできなかったりと、人によって症状はさまざまです。
また発達障害は明確に区分できるものではなく、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)とLDを併発しているケースも多く存在しています。「LDだからこの業務ができない」と決めつけるのではなく、どの発達障害の症状がどれほど出ているかを見極め、「できること」「できないこと」を明確解していくことが大切です。
それではLDの方が仕事をするとき、どのような業務を苦手としてどのようなことに困ることが多いのでしょうか。ここからは、LDの方の仕事上での特性について見ていきましょう。
文字の読み書きを苦手とする傾向にあるLDの方は、資料やマニュアルを読むように指示されたときに困ってしまうことが多いです。文字を一文字一文字拾うように読んで内容が頭に入りにくかったり、読み間違いをして正しい文脈を読み取れないことがあるためです。
対策法としては、重要なポイントにマーカーを引いて渡してあげたり、改行やイラストなどを活用して視覚的に認識しやすくすることが挙げられます。本人だけの努力には限界があるため、周囲の人がサポートをしてあげることが大切です。
大切な会議や上司から説明を受けている場面でとっさにメモを取れないのも、LDの方の特徴です。メモをしたいと思っても文字をスラスラと書けないため、あとになって「どうしてメモしなかったのか」と周囲に責められてしまうケースもあります。
もしも文字を書くことに苦手意識があるのであれば、文字以外の方法で記録を取る方法が有効です。ボイスレコーダーや動画での撮影など、文字以外の方法で会議や説明の内容を確認できるように対策を取るようにしましょう。
計算や複雑な思考を必要とする業務も、LDの方が苦手とする業務です。たとえば、電話口での見積金額の提示や経理などの業務を苦手とする方は多く、パニックなってしまうこともあります。
公式があれば数字の計算はできる人もいれば、数字の計算自体を苦手とする人もおり、苦手とする計算や思考のレベルは人によって大きく異なります。電卓やExcelで簡単に計算ができる環境が整えられていればスムーズに仕事ができる方も多いため、ツールを活用しながら自分なりの対処法を作っておくことが大切です。
LDの方は読み書きや計算などを苦手とする傾向にありますが、逆に得意な傾向にある業務も存在しています。LDの程度やほかの発達障害との併発具合によって、向き・不向きは異なります。しかし、LDの方が得意とする仕事や苦手とする仕事は、ある程度分類することが可能です。
ここからはご紹介したLDの方の特性を踏まえ、向いている仕事と向いていない仕事について解説していきます。
LDの方は、人によって、全体像を把握したり視覚的に把握したりすることが得意な傾向にあります。以下のような仕事は、障害によるストレスをあまり感じることなく業務を遂行できる傾向があります。
発達障害の方は他者とは異なる感性や感覚を持っていることも多く、他の人が思い浮かばないようなアイデアが閃くこともあるでしょう。
また一般企業に就職する際も、特性に合った仕事内容であれば問題なく業務が進められることがほとんどです。たとえば以下のような業務であれば、LDの方でも無理のない範囲で仕事ができます。
ただし、計算が苦手でもパソコンで見積が作成できれば営業職に就けますし、レジで計算ができるのであれば販売職も問題なくこなすことはできます。「できないこと」で職業を限定してしまうのではなく、「どんな工夫すればやりたい仕事ができるか」に目を向けると、就職・転職活動の幅が広がるでしょう。
LDの方に向いていない仕事を一概にいうことはできませんが、苦手とする業務がメインの仕事を選んでしまうとストレスが増え、精神的な負担がかかってしまう傾向にあります。読み書きが苦手な方が出版社に就職すれば業務が苦痛になってしまいますし、計算を苦手とする方が手計算がメインの経理業務に就けばミスが増えてしまうことがあるかもしれません。
自分の特性をしっかりと理解した上で、苦手とする業務がメインにならない仕事を選ぶとLDの方の負担を減らせるでしょう。自分で避けたほうがいい仕事を判断できないときは、主治医や支援機関の手も借りながら仕事を探していくと失敗しにくいです。
LDの方が仕事をスムーズに進めるためには、以下の2つのコツを意識することが大切です。
苦手なことがあると「この業務はできない」と避けてしまいがちですが、場合によっては電子機器などを使うことで苦手を補えるケースもあります。具体的には、以下のようなアイテムの力を借りれば、LDが苦手とする業務も問題なくこなせるようになります。
仕事をする上で苦手な業務を完全に避けることはどうしても難しいので、テクノロジーを駆使して工夫しながら業務に取り組んでいくようにしましょう。
周囲の人の力を借りることでより自分らしく働くことができるようになります。苦手なことがあっても、「口頭の説明を聞いて理解することが難しいので、紙に印刷して欲しい」「動画や音声で記録することを許可してほしい」など、周囲に少し配慮してもらうだけで仕事がスムーズに進められるようになるかもしれません。
こういった対策や配慮の協力をお願いするのであれば、入社前の段階で障害についてしっかりと伝えておくことが大切です。障害者雇用枠や障害者向け転職エージェントを通した求人応募であれば融通が利きやすくなるケースが多いため、自分で交渉することに抵抗がある方は、プロの手を借りてみるのもひとつの手です。
最後に、ここまでの内容を踏まえてLDの方が転職を成功させるためのコツについて紹介していきます。仕事の探し方に行き詰まっている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
LDの症状で障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用で仕事を探すことも選択肢に入れましょう。障害に合った合理的な配慮が受けられるようになり、苦手な業務に対してサポートを受けられるようになります。
ただし障害者手帳を持っているからといって、必ずしも障害者雇用で就職する必要はありません。賃金や労働条件など、障害者雇用では希望が叶えられない場合は障害をクローズで求人応募しても構わないのです。制度を利用するかどうかはあくまで選択肢のひとつで、より自分らしく働ける雇用枠や雇用形態を見極めていくことが何よりも重要です。
近年は発達障害への理解が進みつつあり、公的機関の発達障害への就労サポート制度も充実してきました。公的機関のサポートでは就労だけではなく生活での困りごとなども相談できるため、困ったときは積極的に頼ってサポートをしてもらうようにしましょう。
LDを含む発達障害に対するサポートをしてもらえるプログラムとしては、以下のようなものが挙げられます。
LDで悩む方が頼れるのは、決して公的機関だけではありません。民間企業にも発達障害を持つ方の支援をしているところは多く、ほとんどの場合無料でサービスを受けることができます。
障害者向けの就職支援としては、障害者専門のナビサイトなどが挙げられますが、なかでもおすすめなのが転職エージェントの活用です。転職エージェントでは、無料で障害の相談や適性診断、求人の紹介や選考のサポートが受けられます。ハローワークやナビサイトでは募集していない非公開の優良求人も豊富なので、より好条件の企業に出会えます。障害への配慮の相談も専任のカウンセラーを通して行える上に、就職後の定着支援や相談を受けることも可能です。
障害者が転職を成功させるために重要なのは、とにかく選択肢を増やして自分に合った条件の企業を見つけることです。ハローワークや公的機関の活用に加えて、障害者向けの転職エージェントの活用もぜひ検討してみてくださいね。
「どう苦手を補うか」を意識して仕事を探すと就職・転職活動を成功させられるでしょう。
LDの方が1人で自分に合った仕事を探すのは大変なため、公的機関や転職エージェントも活用しながら仕事を探していくことが大切です。
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