チャレンジ雇用の利用はどんな人におすすめ?トライアル雇用との違いも解説 | ココピアキャリア

チャレンジ雇用の利用はどんな人におすすめ?トライアル雇用との違いも解説

障害をお持ちの方のなかには「一般企業に就職したいけれど働いた経験が少ない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そのような悩みを抱える方におすすめの制度が「チャレンジ雇用」です。チャレンジ雇用であれば働いた経験がなかったり少なかったりする人でも、安心して働くことができます。働ける期間は限定されていますが、終了後はそのチャレンジ雇用の経験を生かして一般就職を目指すことができます。

この記事では、チャレンジ雇用の概要やトライアル雇用との違い、どのような人に向いている制度かなど、知っておきたい情報をわかりやすく解説します。


チャレンジ雇用ってどんな制度?

チャレンジ雇用は、障害者を国や地方公共団体の機関で非常勤職員として雇用する制度です。就労経験の少ない障害者が一般企業への就職を目指せるように、非常勤職員として実務経験を積み就職に必要な能力を高めることが目的です。ここでは、チャレンジ雇用の制度内容についてご紹介します。

国や地方公共団体で行う障害者雇用

チャレンジ雇用とは、国や地方公共団体の機関で一定期間障害者を非常勤職員として雇用する制度です。働いたことがない人や勤務経験が少ない人、あるいは働くことに不安のある人が、適切な配慮を受けながら安心して就労経験を積むことができます。ただし、雇用期間が定められているため、永続的に公務部門で働けるわけではありません。

最終的には一般企業への就職チャンスも

チャレンジ雇用の目的は、国や地方公共団体の機関における一定期間の業務経験を踏まえて一般企業への就職を実現させることです。障害者雇用に不安を抱える一般企業に対して、省庁や地方自治体での就労実績を示すことで就職へつなげます。職歴のない障害者が一般企業に応募するのはややハードルが高いですが、国や地方公共団体での就労実績を伝えれば強みになるでしょう。


チャレンジ雇用が広がる2つの転機

これまで、障害のある人が働きたいと思った際に、就労の場や必要な支援の不足が課題となってきました。ここでは、チャレンジ雇用が広がるきっかけとなった「障害者自立支援法」と「成長力底上げ戦略」についてご紹介します。

2006年の障害者自立支援法

障害者自立支援法とは、障害者の地域生活と就労を進めて自立を支援するために施行された法律です。従来の支援制度が抱えていた問題点のひとつとして「働きたいと考えている障害者に対して、就労の場を確保する支援が十分ではないこと」が挙げられていました。そこで、障害者自立支援法によって、障害者による就労の場を確保する支援の強化が進められるようになりました。

なお、2009年9月9日の連立政権合意において「障害者自立支援法」は廃止され、その後の2013年4月1日に新たに「障害者総合支援法」が施行されました。障害者総合支援法では障害者の定義に難病などが追加されると同時に「重度訪問介護の対象者を拡大する」「ケアホームをグループホームに一元化する」などの施策が実施されるようになりました。

2007年の成長力底上げ戦略

2007年2月15日「成長力底上げ戦略(基本戦略)」に基づき、『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』が策定・実施されました。この計画では、以下の3つの施策を盛り込んでいます。

地域の特性を活かした就労支援体制の全国展開

  • 障害者就業、生活支援センターを全障害保健福祉圏域(400か所)に設置
  • 「チャレンジ雇用」の推進・拡大
  • 「就労移行支援事業」の全国展開

ハローワークを中心に福祉関係者と連携した「チーム支援」の全国展開、体制・機能強化

「工賃倍増5か年計画」による福祉的就労の底上げ

2007年内にすべての都道府県において、企業的な経営手法も活用しながら「工賃倍増5か年計画」を全国で策定・推進しています。


チャレンジ雇用とトライアル雇用の違いって何?

チャレンジ雇用と混同しやすい制度に「トライアル雇用」があります。ここではチャレンジ雇用とトライアル雇用の特徴とともに、各制度の違いについて解説します。

チャレンジ雇用の特徴

チャレンジ雇用は国や地方自治体が一定の期間障害者を非常勤職員として雇用する、という制度です。特徴を簡単にまとめると以下のようになります。

働く場所 役所や公立の学校など国や地方自治体の機関
雇用期間終了後 一般企業への就職を目指す

トライアル雇用の特徴

トライアル雇用とは、障害者を原則3か月間試行雇用することで適正や能力を見極め、継続雇用につなげる制度です。特徴は以下のとおりです。

働く場所 一般企業
雇用期間終了後 同じ会社で引き続き働く

チャレンジ雇用では、一定期間国や地方自治体の機関で働いたあとに一般企業への就職を目指します。一方、トライアル雇用では同じ会社で引き続き働くことを前提に一般企業で働きます。働く場所と雇用期間終了後の働き方が大きな違いです。


チャレンジ雇用の概要

国や地方自治体の機関で障害者を非常勤職員として雇用する制度であるチャレンジ雇用には、利用対象者と雇用期間が定められています。ここでは、チャレンジ雇用の利用対象者や雇用期間、担当する業務内容の傾向や求人の探し方について解説します。

利用対象者

チャレンジ雇用の対象者は知的障害者・精神障害者・身体障害者です。障害のある人で働いた経験がない、少ない人や、就職に向けて働く経験を積みたい人などが対象です。障害の種類・障害者手帳の有無など応募条件は雇用先によって異なるため、事前の確認が必要です。

雇用期間

雇用期間は、1年以内の期間を単位として1~3年と定められています。最大3年までと規定されており、具体的な期間は雇用先によって異なります。多くの場合、試用期間後は1年ごとに契約更新されるようです。

雇用期間中は週10~15時間程度から始めて、体調に応じて少しずつ勤務時間を増やしていくことも可能です。1~3年間で就労実績を積み、その実績をもとに一般企業への就労を目指します。

主な業務内容

事務補助やバックヤードなどの業務が主ですが、雇用先によって異なります。例として郵便の仕分けや配布などの軽作業、パソコンによるデータ入力や資料作成などが挙げられます。清掃や施設管理などの環境整備業務を任せられる場合もあります。チャレンジ雇用は省庁や地方自治体で働くことから、傾向として事務補助業務が多くみられます。


チャレンジ雇用の探し方

チャレンジ雇用の求人は、ハローワークや各行政機関のホームページ・広報で探せます。ハローワークを利用してチャレンジ雇用を希望する場合は、求人登録が必要です。ハローワークには障害者雇用窓口が設けられており、専門知識を持つ相談員がアドバイスをしてくれます。チャレンジ雇用のためにサポートが必要な場合は専用窓口を利用しましょう。

また、体調管理のような手厚いサポートを受けながらチャレンジ雇用の求人探しをしたい場合は、障害者職業センターや就労移行支援事業所の利用がおすすめです。


チャレンジ雇用決定後の利用の流れ

チャレンジ雇用で働き始めた際に不安を感じたり体調を崩したりしないように、前もって大まかな流れを把握しておきましょう。ここではチャレンジ雇用決定後の流れをご紹介します。

就業前実習

就業前実習はどの程度の業務ができるのかを確認し、就業後の業務内容を決めるために行われます。実施期間はジョブコーチとの事前の相談によって設定され、一般的には1週間(5日)、あるいは2週間(10日間)程度とされています。実習中の出退勤時間を体調に応じて配慮してもらえるように、面接時などのタイミングで事前に決めておきましょう。

なお、実習期間中はジョブコーチがつきます。毎日の実習が終わり次第、当日行った業務に対して受け入れ先の担当者とジョブコーチが振り返りを行います。翌日以降の実習内容に振り返り内容を反映してくれるため、都度適切な業務を与えてもらえて安心です。

就業以降

就業前実習後に「本雇用しても問題ない」と判断されれば本雇用に移ります。本雇用に移るとジョブコーチの来訪頻度が減り、業務の指示や指導が受け入れ部署の担当者に変わります。担当者を中心としつつも、ほかの職員が積極的に声をかけてくるなど職場になじめるような工夫をしてもらえることが一般的です。食事時間は1人で過ごしたい、などコミュニケーションの配慮が必要な人はその旨を伝えておきましょう。

また、日常的な業務管理や問題点の把握・解決だけでなく、働きやすい環境にするための配慮もしてもらえる点がチャレンジ雇用の特長です。

コミュニケーションの形成

コミュニケーションの取り方は障害の種類や程度、特性によって異なります。業務外のコミュニケーション方法として「職員と障害者とが一緒に食事をとる」「忘年会や歓送迎会で親睦を深める」などが挙げられます。日常の業務においても必要に応じて担当者以外の職員と接して、コミュニケーション能力を形成できるでしょう。

一般企業への就業

公務部門において1~3年の業務経験を積んだのち、業務経験を踏まえて一般企業への就職を目指します。チャレンジ雇用の予定期間が終了する半年ほど前に人事担当者・本人・ジョブコーチの三者で面談を行います。面談で期間の更新を行うか、あるいは一般企業への就職を目指すかを決定します。

一般企業への就労を目指す場合、公務部門は就職活動の有給休暇を認めたり業務内容を軽減したりなどの配慮をしてくれるようです。一般企業への円滑な就職のためにも日頃からジョブコーチと定期的に打ち合わせをしておきましょう。同時に、受け入れ先の部署に対する就職活動時の対応確認も大切です。


チャレンジ雇用の利用者の傾向

チャレンジ雇用は障害を持つすべての人が挑戦できますが、この制度の利用が向いているケースと不向きのケースもあります。以下で向き・不向きそれぞれの特徴をご紹介します。チャレンジ雇用が自分に向いているかどうか確認してみましょう。

チャレンジ雇用が向いているケース

チャレンジ雇用は難易度の高い業務が少なく、就労経験がなくても勤務可能です。そのため、主に以下の人がチャレンジ雇用に向いていると考えられます。

  • 就労経験がない、少ない人
  • 一般企業で働いたことがない人
  • ルーティンワークが苦にならない人
  • 特別支援学校を卒業したばかりの人
  • 事務補助を希望する人

チャレンジ雇用が不向きのケース

チャレンジ雇用では毎日同じような簡易業務をこなすことが珍しくありません。そのため、以下の人には不向きの可能性があります。

  • 無職の状態がなく、一般企業である程度の就労期間がある人
  • 就労に十分なスキルがあり、働くことに対して自信がある人
  • 実力に応じてさまざまな業務に挑戦したい人

これまでキャリアを積んできた人はチャレンジ雇用に対して物足りなさを感じるかもしれません。スキルやキャリアに自信のある人はチャレンジ雇用ではなく、トライアル雇用の利用や一般企業が設けている障害者枠への応募を検討しましょう。


まとめ

チャレンジ雇用は、障害者を対象に1~3年のあいだ国や地方自治体の機関で就労経験を積める制度です。働いた経験がない・少ない人でも挑戦できて、ジョブコーチのサポートのもと体調への配慮を受けつつ安心して働くことができます。チャレンジ雇用で働けば事務補助に必要なスキルを身に付けられるだけでなく、「自分でも働ける」という自信を得ることもできます。

興味を持った人はハローワークやお住まいの障害者職業センター、就労移行支援事業所などの機関に相談して、チャレンジ雇用に挑戦してみましょう。